アラジン ブルーフレーム ヒーター (B.F.H.)は第2次世界大戦前に英国に滞在した人達が日本に持ち帰り、ほんの一部で愛用されていました。

32年にベンツやフォルクスワーゲンの輸入販売で著名な株式会社ヤナセがいち早く輸入をはじめ、その品質性能の良さを知っている人々の口伝えで上流家庭で愛用され始めました。

この頃はI.Rブランドやシリーズ15で、今でもこのタイプを使っているユーザーを多く見受けます。

35年頃から国産のストーブが数多く生産され始め、翌36年、暮らしの手帖社が市場にある全石油ストーブをテストした結果アラジンB.F.H.が品質性能ともに第一位の評価を受け、一躍脚光をあびました。

暮らしの手帖の愛読者層と、アラジンB.F.H.の購買層が一致していた事もあって、急速に普及し始めました。

一般に商品は、余るほど市場にでると、必ず流通過程での混乱が起きたり、商品を良く知らない人が乱暴に使って事故を起こしたりして商品そのものの寿命を縮めてしまいますが、アラジンB.F.H.の販売方法は無理な拡販体勢をとらず、限定した市場にだけ出して名声を維持してきました。

38年〜42年頃、国産の石油ストーブが急速に普及し、同時に使用ミスによる火災事故が増加し、その結果各メーカーは、転倒しても火災のおこらないさまざまな構造を研究開発しました。そして安全二重タンク構造が開発され、アラジンもこれを採用し、42年度からシリーズ16として発売をはじめました。

44年には外枠とチムニークリップの形状を新二重タンクに合わせて変更したシリーズ16新型を発売しました。

シリーズ16型から、芯についている位置決めのボタンホックが爪式に変わり、また二重タンク構造のため、芯調節ハンドルの位置の形状、方式が変更となりました。

この頃から、日本では石油ストーブ唯一の弱点であった地震に対する自動消火問題がやかましくなり、各社ともその開発に取り組みました。

JIS規格の中にこの項目が加わり、年を追って厳しくなってきました。

6年にはシリーズ25として、英国で開発した対転倒自動消火装置を装着しましたが、これは震動で消える装置ではなく、転倒時のみの作動で、47年のJISは改定によりあらたに震動時の消火が義務付けられました。

47年アラジン社としては英国側で開発できる最終的な対震自動消火装置を装着したシリーズ32を発売しました。これは地震動によって蓋が上から落ち込む方式でしたが、地震のない英国で得られるデータは少なく、実験する設備も日本より少ないため、日本のメーカーが開発した消火装置の方がやや優位で、その後のJIS規格の変更により、このシリーズは1年で打ち切り、設備のある日本側に、アラジンに合う対震自動消火装置の開発を依存することになりました。

48年、日英の技術協力の形でアラジン社と深いつながりを持っていた国産石油ストーブ専門メーカーの株式会社フジカが、それまでにアラジン社との間に技術提携、販売提携の契約を結んでいたので、急速にこの計画が具体化し、アラジンブルーフレーム本体の中で直接燃焼に関係のない上面板、外枠、外筒の国産化と消火装置の開発生産を日本側が受け持つこととなりました。

このために48年日本アラジン社が株式会社ヤナセ、株式会社フジカ、英・米アラジン社の合弁において設立されました。

48年、シリーズ37P・K・Dとして、英国製部品を日本で組み立てたアラジンブルーフレームが発売されました。

一方地震に対するJIS規格が次々と改定され、こまかい部品の改造を要求されるようになりました。

49年も48年と同じ方式でタンクや燃焼部は英国製、その他の部品を国産し、日本で組み立てを行いましたが、周知のとおり49年の英国産業界は激しい 労働攻勢やインフレのため、停滞を続け、輸入の納期等に多少の問題が生じました。その上、50年からのJIS規格による規制がさらに厳しくなり、従来 の真鍮製ハンダ付けタンクでは、新しい規格に適さないようになったので、18.8クローム・ステンレススチールを用いた電気熔接タンクに変更することに し、その製造を日本側に依存することになりました。

50年からの対震自動消火装置は、“作動状態にしないと、ストーブに点火できない構造”というJIS規格に変更され、“消火装置を取り付ける”考えから“消火装置を本体に組み込む”考え方となりました。

一方48年からの実績により、日本側技術に対する評価が高まり、英国側としても英国でなければできない部品を除いては、50年から全て日本側に任せることに決定しました。

この間、日本アラジン社をさらに強化するため、従来からアラジン魔法ビンの総発売元として米国アラジン社と深いつながりのあった大日本インキ化学工業株式会社が、日本アラジンの経営に参加し60%の大株主となって社名もディック家庭機器株式会社に変更、アラジンブルーフレームの国産化プロジェクトを強力に進めることとなりました。

かくして、完全に新JIS規格に適合するアラジンブルーフレームが誕生し、50年のシーズンからシリーズJ380001、J380002、J380002Sとして発売されることになりました。

51年は芯の繰り出し装置等を装備したシリーズJ380003、J380004が発売されました。

53年より対震自動消火装置は、芯下げ方式のみとなり、構造もスタイルもすっきりしたシリーズ39カスタムJ390001<W>、J390001<G>として発売されるようになりました。

54年にはシリーズ39カスタムの優れた性能をベースに、外筒の上下装置、タンクの引き出し装置などユニークなアイデアをもりこんだファン付きポータブルストーブ、ファンブルーJ351001<W>、J351001<G>が発売されました。
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